ヤン監督は「自分のために作った映画ではありますが、みなさんに楽しんでいただけたら、これ以上のことはないです」と、上映の喜びを語った。
イ・ファンさんは、ヤン監督について、「とにかく俳優を信じてくれて、台本の読み合わせやリハーサル、演技指示などは一切ありませんでした。むしろ、それぞれの家族のことや、自分たちがどんな生き方をしてきたか、ということを話し合うことが多く、それがとても重要でした。演技について指示を求めたこともありましたが、私の胸を軽く叩き『君の胸が全て知ってるよね』と言ってくださって、それが今でも心に残っています」と、撮影エピソードを交えて、その印象を語った。
客席の男性から、「運命的ともいえる濃密な人間関係を描いた理由」について質問されると、ヤン監督は、「韓国という社会の中に生きる人間、そして、その家族の中で生きる人間が抱えるさまざまな問題を描きたいと思ったから」と答え、「この映画では、それぞれのキャラクターが、自分の愛し方を知っていく過程を描いています」と付け加えた。
また別の質問者が「ここ最近観た映画の中で一番の作品」と絶賛し、家族をメインテーマにしたきっかけや経緯について訊ねると、ヤン監督は、「実は両親が嫌いで、常にもどかしさを感じて生きていました。でも両親にしてみたら、社会が彼らにあまりに多くを望みすぎているので、自分の家族の幸せを考える余裕があまりないのです。そう考えると哀れな存在であると思います。私がこの映画を撮ろうと思ったきっかけは、家族について悩んでいたからで、このまま放っておいたら歳を重ねてもずっと悩み続ける思ったからです」と当時の家族関係を振り返り、そのいきさつを語った。
しかし一方で監督は、「私は両親のことを嫌っていながら、この映画を撮るにあたって両親からお金を借りて制作費を出してもらっていたんですね(笑)。でも、両親から借りたお金は、1か月前に奇跡的に返すことができました」と恥ずかしそうに告白し、会場の笑いと拍手を誘った。