最初に柴田監督から「ずっとばたばたして、内心今なにが起きているのかわかっていないのですが今日一緒にお客さんと一緒に見ます」とコメント。ぎりぎりまで制作作業が行われていたこの作品は、関係者もまだほとんど見たことがないという出来立ての作品。舞台挨拶に登場した出演者達も、完成したばかりの作品をともに見られる喜びを語った。
上映終了後に再び大きな拍手で迎えられた柴田監督は今の気持ちを聞かれ、「気持ちよかったです」と手ごたえを得た様子であった。
まずは東京フィルメックスの市山尚三プログラム・ディレクターより、奇想天外な設定に関し、このストーリーの着想はどこから来たのかという質問が出た。この作品の発想には二つの源があると答えた。
一つはコメディへの挑戦。「僕が好きだったドリフターズとか、カトチャンケンチャンごきげんテレビとか、どこら辺が笑いか分からないような笑いが好きなんです」と柴田監督は語る。全編に流れるコメディ要素は前作「おそいひと」とは違う、新しい柴田ワールドを作りだしている。
もう一つは秋葉原事件後の街の雰囲気。「秋葉原事件の後に秋葉原に行ったことがあったのですが、閑散としているんです。皆、真ん中の道を歩かない。横道歩きながらしかも後ろめたい気持ち。いいようの知れない感じでこれはなんだろう。そういう事件はどれ位のスピードで消えてしまうのだろうという思いがあって、映画で表現ができるんじゃないのかなと」と犯罪のエピソード作りのきっかけになったことを明かした。
柴田監督の前作である、『おそいひと』の主役を演じ、本作でも寺田の保護司というキーパーソンを演じる住田雅清さんに柴田監督がコメントを求めると会場からは大きな拍手が起こった。保護司のキャスティングを考えていた際、「目の前に住田さんがいて、この人でいいじゃん、的な感じで(笑)」ということで保護司役は決まったのだそう。それでも、住田さん演じる“寺田の過去を一緒に背負う保護司”はひときわ存在感を放つ人物である。住田さんは、初めて見る完成した『堀川中立売』に「不思議な感じが心地いいね」とコメントした。