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高橋玄、記事に書けない映画界の裏話を次々暴露!

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「インディペンデント映画の掟」トークイベント第1部参加者。後列左から辻岡正人、円美穂、白井蛍、白井優。前列左から中田圭、高橋玄、増田俊樹。

 10月4日(月) 東京・阿佐ヶ谷のAsagaya Loft Aにて”実話 増田俊樹シリーズ”第3弾となる「インディペンデント映画の掟」が開催され、「沈黙の隣人」脚本・監督・主演の増田俊樹、「GOTH」「ポチの告白」等で監督を務めた高橋玄プロデューサー、中田圭監督らが登壇。インディペンデント映画の掟から日本の劇場における問題などについて熱く激しいトークバトルが展開された。
 この日のイベントは、1部「乱暴者の世界」公開記念トーク、第2部「老獄/OLD PRISON」x「沈黙の隣人」の2部の間にトークショーが行われる変則的な2部構成(実質的に3部)で、普通は耳にすることのないインディペンデント映画の裏側を聞こうと平日の夜にも関わらず多くの人が詰め掛けた。

 第1部の「乱暴者の世界」公開記念トーク冒頭から気を吐いたのは、司会の増田から「ヤクザみたいな人」と紹介された高橋玄。高橋は、自身26年間自主映画を撮り続けている立場から、今回のテーマでもある”インディペンド”の単語は好きではないと開始早々に否定。自主映画という言葉と響きへの拘りを見せ、自主映画は、誰に頼まれている訳でもなく、自分で映画を作りたいから作ることが何よりも大原則であると持論を披露した。一方、1年1本のコンスタントなペースで映画を手掛けている中田は、自主映画だけでなく、商業ベースを前提とした作品も多い。商業ベース作品では自主映画と違って全てを好き勝手に決めることが出来ないが、これまではキャスティング、脚本変更など比較的自由に出来る機会が多く恵まれていたと、明かした。
 時間の経過と共にお酒の勢いも加わり、トークは熱を帯び内容はどんどんエスカレート。国際基準と日本の会社員プロデューサーとの違い、日本における映画製作体制の問題点を指摘。映画界は未だに悪しき慣習や形式主義が横行しており、合理性に欠けていると問題点が次々に暴露された。中田は、これまでの経験から原作やオリジナルの存在する作品の映画化について触れ、作者個人ではなく、出版社などに実権が委ねられている現在の実情と難しさを明かし、製作側でしか分からない色々な苦労に観客は興味深く聞き入っていた。
 白熱するトークバトルの終盤、一般客として会場に来ていた劇団EXILE華組の秋山真太郎が、10月9日(土)よりシアターN渋谷で公開されるインディペンデント映画「乱暴者の世界」に出演している縁で急遽登壇させられるサプライズがあった。最後に高橋が自身が望む映画を実現させるため「『ポチの告白』は、僕の最後の日本映画。今後、どんな魅力的な条件を提示されても日本の出資者による日本映画は撮影しない。今後は、日本を出て海外で映画に携わる」と仰天宣言が飛び出すなどディープで濃密な第1部が終了した。

 第1部と第2部の間には詩人/俳優である近藤善揮コーナーと題し、前半は元AV女優で作家/女優の川奈まり子、後半は元悪役商会で俳優の滝川拳らが登壇してトークが行われた。近藤と川奈の縁は、映画「冷たい部屋」夫婦役での共演がキッカケ。川奈は、出演依頼が”女優をやって欲しい。でも、ギャラは1円も払えません。”と横浜国立大学生からのmixiメッセージを暴露し、会場の笑いを誘った。当初、怪しい雰囲気を感じて躊躇していたが、実際に会って面白そうだったので自主映画への出演を決めたという。約7年振りに台詞のある演技をした川奈だが、現在は自身の夫をモデルにしたAV監督の裏側、日常を追うドキュメンタリー「溜池式」を撮影している。同作では自ら企画・演出・構成・監督などをこなし、自主映画そのもの。これらは撮影終了分がYouTubeで順次公開されており、twitterやコメントなどで寄せられた意見を撮影反映させ、最終的に1本に編集し、作品として完成させる予定となっている。
 元悪役商会の所属し、これまで数多くのTVや映画に出演している滝川は、近藤と共演した自主映画「HARD BULLET」の裏側、長い俳優経験から感じたことを熱く語った。4年前に自らお金を出して自主映画の製作した理由を、滝川は”自分が主役をやりたかったから”と俳優として素直な感情と悪役俳優ならではの悩みを打ち明けると、増田を始めとする他の俳優陣も揃って賛同。続けて「技術の向上による機材の進歩、画質の向上、低価格化で気軽に誰でも作品を撮影出来る今はいい時代」と改めて自主映画の魅力を明かし、「自分の夢である好きな事を続けるには何か犠牲が伴う。人との繋がりが重要」の重みのある持論には誰もが納得して頷いていた。最後に”自主映画万歳!”の意味を込め、登壇者と観客全員による1本締めで渋く括った。

 第2部は、2011年春公開の映画「老獄/OLD PRISON」監督の辻岡、映画「沈黙の隣人」監督・脚本・主演の増田により、映画製作よりも劇場で上映する難しさ、それぞれの最新作を中心にトークが展開された。劇場で映画を公開する場合、配給や宣伝会社等と契約して上映交渉や宣伝などを一任するのが殆どだがその分コストが発生する。実際、宣伝・配給費が制作費を上回ってしまうようなケースもあり、その負担が上映のネックとなることが多い。辻岡プロダクション、月の石では、劇場との上映交渉から配給までを全て自社などして少しでも余分なコストを極力カットするなど工夫の一端を明かした。
 先日多くのメディアで取り上げられた映画「老獄/OLD PRISON」記者会見では、辻岡監督自らが仕切るだけなく、主演の女優を決める段階から話題度を考慮した配役の妙による結果に自信を見せた。辻岡は「周りのスタッフの間では池脇千鶴を主演に推す意見が占めていたのですが、個人的にお決まりの女優だと面白みに欠ける」と悩んでいた当時を振り返った。ある日、「ある程度有名な人だからではなく、この人がこんなことをするから面白い人。かつ映画のヒロインと合致し、さらに看護婦としての透明感を覆す人」と考え、最終的にアジャ・コングに決まった背景を明かした。この辻岡の感性と発想に、増田は「凄い!」を何度も声に出すなど大絶賛していた。その後も辻岡と増田の軽妙なトークが続き、予定時間を大幅に超過するほどに盛り上がりを見せ、最終電車を心配する人が出るほどだった。

 映画「乱暴者の世界」は、10月9日(土)よりシアターN渋谷他全国順次ロードショー。映画「冷たい部屋」は11月14日(水) 関内ホールを皮切りに、11/21(水) KINEATTIC(原宿)、12/11(土) 角筈ホール(新宿)他順次公開予定。

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増田俊樹(俳優/映画監督)

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高橋玄(プロデューサー/映画監督)

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中田圭(映画監督/俳優)

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第1部トークショーの模様。左から中田圭、高橋玄、増田俊樹。

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秋山真太郎(劇団EXILE)

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辻岡正人(俳優/映画監督)

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白井優(女優)

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円美穂(女優)

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白井蛍(歌手)

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近藤善揮(詩人/俳優)

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川奈まり子(作家/女優)

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平田大輔(映画「冷たい部屋」監督)

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近藤善揮コーナー前半に参加した登壇者。左から平田大輔(映画「冷たい部屋」監督)、川奈まり子、近藤善揮、汐田海平(映画「冷たい部屋」プロデューサー)
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滝川拳(悪役俳優)

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桜田昌三(俳優)

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横川康次(俳優)

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近藤善揮コーナー後半に参加した登壇者。左から増田俊樹、桜田昌三、滝川拳、横川康次、近藤善揮。
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大澤真一郎(俳優)

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昼間たかし(ジャーナリスト)

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撮影:哀川和彦 記事:哀川和彦 ©2010 Zenzouren