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映像作家・大林宣彦監督、新人監督・中島央と長編初作品を絶賛

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映画「Lily」トークイベント終了後、ガッチリ握手を交わす映像作家の大林宣彦監督(左)と中島央監督(右)。

 4月23日(土) 映画「Lily」が公開初日を迎え、東京・渋谷のシアターN渋谷で行われたトークイベントに同作品で監督を務めた中島央と映像作家の大林宣彦監督が登壇し、熱く語った。
 同作は、スランプに陥った若手脚本家が1週間以内に新作を書き上げることになり、恋人との実生活を基に恋愛物語を書き始める姿を描く異色のラブストーリー。日本人監督の処女作ながらハリウッドで製作された作品。

 この日の行われたイベントは、劇場で販売されているパンフレットに掲載されている対談が縁となり、新旧監督の夢の対談が実現した。すでにDVDで作品を鑑賞していた大林監督だが、イベント前に来場者と一緒に劇場で再鑑賞。開口一番「いやー本当におめでとう。本当に面白かった」と作品を観た感想をコメント。これを聞いた中島監督は「嬉しいです」と照れを浮かべながらも感無量な様子。
 大林監督は「映画は大きなスクリーンで観てこそ。テレビのモニターでは“半分しか観ていない”」と持論を説明し、“Lily”は大きなスクリーンで観る価値ある作品と評した。一方で「最近はテレビサイズが主流で、日常的な芝居でも見栄を張っている。表情をオーバーにしないと分からない説明演技。この作品にはそれがなく、日常的な芝居をしている。デリケートな表情が全部伝わってくるし、遠景を歩いてる人の姿や駅の屋根のデコボコや染みとかそういったもの全てが物語と共に主人公の喜怒哀楽にキチンと集約されている」とテレビ時代に映画サイズの演出した中島監督の手腕を褒め讃えた。

 アメリカのハリウッドに渡ってまで映画にこだわり続けた中島監督は「テレビとの違い。映画的な表現とは何かと突き詰めて考えた上で、やっと初めて少しは自分のものに出来たんじゃないかというのがこの“Lily”という作品」と自身初の長編作品に自信を見せ、映画的なモーメントを作ることこそが“真髄”と持論を明かした。ゴダールやアントニオーニや黒澤明などの作品を観て育ってきたという中島監督。「現代で再現は出来ないけど、自分が受けた影響を自分なりに吐き出して表現したい」と意気込みを語った。
 これに対して大林監督は「ゴダールをうまく肉体にしてますよね」と断言。「ヌーヴェルヴァーグは、ただ映画を壊しただけだという人がいる。確かにその通り。でも、壊したということは古いことを知っているということ。あなたは古典的な映画を含めてDNAのところまで受け継いで、エンターテインメントとしてうまく活かしてる」と映画の巨匠を挙げて中島監督の才能を表現した。

 監督が映画を撮るは理由はたった1つで「好きな女のために撮るもの」と語る大林監督。「日の光では格好悪いことが、映画館は暗闇の中だから出来る。だから、人の心も嘘も正直になる。映画館の暗闇を信じているから、格好悪くても、恥ずかしくても、ダサくても正直な自分を表現している。本当の勇気を。恋愛で“I Love You”なんてこんな恥ずかしい言葉を正直に言うから美しい。貴方の映画もその感動がある」と純粋な恋愛映画である“Lily"を絶賛した。

 最後に大林監督は先輩の立場から中島監督に対して「正直に表現出来ることは利点だが、正直なだけでは深みがなく欠点になる」と苦言を呈し、大勢のスタッフが共同作業する作品への挑戦を薦めた。さらに「2本目からは成功も失敗も含めて次に続く人への指針になるべき。変に成功だけを求めず、誰もやったことがない自分だけの失敗をして映画の未来を作って欲しい」と若手映像作家に将来に期待を託し、最後に熱い握手を交わした。

 映画「Lily」は、4月29日(金)までシアターN渋谷で絶賛上映中。今後、名古屋、大阪などで全国順次公開。

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大林宣彦(映像作家)
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中島央(監督)
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トークイベント中の両監督。大林宣彦(中央)と中島央(右)
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撮影:哀川和彦 記事:哀川和彦 ©2011 Zenzouren